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Channel: 河野しゅんじのブログ
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銀鏡神楽

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観光ボランティアガイド講座の一環として、銀鏡神楽について有識者の解説を聞いた上で、
33番のうち5番ほど抜粋・短縮版で鑑賞しました。県立西都原高校博物館にて。

午前中は、博物館1階ホールで1時間半ほど、宮崎公立大学の永松敦教授の「銀鏡神楽
~鑑賞の手引き~」という講演がありました。当初、数十人を想定していたところ、100人を
超える参加希望があり、会場を変更して行われたとか。私は、前日宿泊した五ヶ瀬から直行。





永松教授の講演は、歴史的・民俗的な観点から神楽とは何かという解説から始まり、宮崎の神楽
の特色など全般的な紹介がありました。そして、銀鏡神楽については、準備段階の注連(しめ)作り
から始まり、神庭(こうにわ)の作り方、第1番の星の舞、各地区から神面を神社に運ぶ様子、
おもてなしの料理、33番の内容、最後のししば祭りに至るまで、映像を交えた詳しい解説がありました。

後で先生からうかがったところによると、実は、地域の方々でも、それぞれの準備に追われるあまり、
全体がどのように進んでいるのか見たことがないとのことで、この講演を聞いて大いに参考になったと
言っておられたそうです。門外不出の伝統行事、このような形で光を当てることにより、また新たな
魅力を伴って見つめ直すことができるのかもしれません。

私も、神楽についての解説では、修験道の影響で男性の舞として確立した経緯、陰陽道の足踏み的
所作、猿楽能の影響によるドラマ性の獲得、復古神道の台頭による仏教色の排除、椎の木を多用する
照葉樹林文化の特徴など、とても勉強になりました。永松先生は、自分たちでは気付かない宝物が
多いので、改めて足元を見つめ直す必要性について、また、神楽の成り立ちについて考える上で、
照葉樹林文化などの環境も含めて捉えるべきことについて強調しておられました。


午後からは、博物館内の中庭に設営された神庭(こうにわ)で、実際に銀鏡神楽を鑑賞しました。
元々、門外不出で、銀鏡地域においてのみ行われるものとされているところ、主催者側のたっての
要請を受けていただき、33番から以下の5番を抜粋し、しかも時間の制約から短縮版で行われました。
ご理解いただいた関係の皆様に、深く感謝申し上げます。





しかし、神庭づくりには妥協はありません。銀鏡の皆さんは、朝早くから必要な木を伐採したり
して準備を進められ、簡略版ながら神庭を設営いただきました。この祭壇の後ろの木は、
銀鏡から運ばれたもの。ただ、銀鏡神楽を特徴づける要素の1つ、イノシシの頭は模型でした。
(右下は撤収の様子)


 

 


神楽は、銀鏡神社宮司さんによる神事から始まります。全般を通じて、神楽とは、至る場面で、
「祈り」に満ちているものとの印象を受けました。


 


7番「幣指(へいさし)」。双子の兄弟による、軽快で躍動感あふれる舞。


 


一度、6番「鵜戸鬼神」の舞が入った後、再び、「幣指」。5番と6番に鵜戸神楽の要素が含まれている
のは、銀鏡出身の方が鵜戸山道場別当職を務めていたとき習得した神楽を、帰郷後、銀鏡神楽に
盛り込んだものとのこと。


 

 


限られた空間で、様々なステップを踏みながら、相手と息を合わせつつ、次から次へと休む間もなく
続きます。よくよく見ていると、相当な運動量。舞手は相当なアスリートだと思えました。

15番「神崇(かんすい)」では、太刀を持った舞となります。今は模造刀になったようですが、
それでも舞っている最中には相当重く感じられるとのこと。


 

 


16番「荘厳(しょうぐん)」は、弓と矢を用いた軽快で活発な舞。銀鏡神楽の本番は12月14日の夜。
それと比べると、暖かい日差しを受けながら日中行われることにより、相当負担も高まったと思われ
ます。かなり汗をかきながら、息も上がっておられた様子。


 

 

 


17番「柴荒神(しばこうじん)」は、別名「はらかき荒神」と言われるそうです。宇宙根本神が荒神の姿に
示現して、柴のみならず森羅万象ことごとく自分の所有物であり、柴の1つもかってにすることあたわず
と言って憤怒の形相で荒々しく舞うもの。そのような設定でありながら、柴荒神の怒りが増せば増すほど、
逆にコミカルな印象も受ける舞でした。


 


最後に全員で御挨拶。皆さん、本当にお疲れ様でした。




マイクを握っておられるのは、85歳の浜砂武昭さん。銀鏡神楽の生き字引と呼ばれているとのこと。
銀鏡神楽についての知識も情熱も、並大抵ではありません。<自分は話が長いから、短くしろと
言われている>などと自分でツッコミながら、大変興味深く、実に<聞かせる>解説をされます。
大いに感銘を受けました。途中で披露された神楽囃子(せり唄)も、見事なものでした。





最後まで今回の神楽をご覧になった永松教授が、いつも12月の夜中に見ているときとは異なり、
日中であるからこそ見えてくる所作や足の運びがあり、そういう意味においても、意義ある取組だ
と言っておられました。なるほど。今回のような講演や公演は、銀鏡神楽に新たな刺激を与え、
新たな光を当てる
こととなり、また、多くの方にその魅力を伝える効果もあり、この大切な伝統を守り、
伝えていく上で、大きなプラスになるのではないかと実感しました。


観光ボランティアガイド講座は、県の委託事業で、「NPO法人 i さいと」が企画・運営いただいて
います。深く敬意を表します。全6回のうち、5回目となる今回の実地研修を受講することができ、
私としても大いに得るものがありました。ボランティアガイドの皆さんをはじめ、受講された方々の
お力添えをいただきながら、宮崎の神話や歴史などを観光面でもっと生かしていきたいと思います。


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